イジワル御曹司に愛されています
彼がぴたりと動きを止めた。

熱い背中を抱きながら、どうしたのかと不思議に思っていると、引きはがすように上半身を起こして、私を見下ろす。


「あーあ」

「あーあ?」

「バカだな」

「え?」

「せっかく余裕あるふりしてやってたのに」


え、なんの話?

と訝しむ間もなく、いきなり背中の下に腕が差し入れられ、私は軽くのけぞるような恰好で、息が止まるほどきつく抱きしめられた。

そこからは、頭が真っ白になって、腕の拘束から逃れようと必死になって、喉がかれるほど悲鳴をあげて、向こうの腕に爪を立てたことを、かろうじてうっすらと、覚えているくらい。



「──ん、なんか来た」


冷房に気持ちよく吹かれながらうとうとしていた私の横で、仰向けで携帯をいじっていた都筑くんが、小さな電子音に反応した。

にじり寄ってのぞくと、画面を見せてくれる。


「松原さんから?」

「そう。写真の意図がようやくわかったって倉上経由で、俺のアドレスと一緒に伝えてもらったら」

「いつの間に」


メールの本文はシンプルで、【ごめんね、これお詫び!】とそれだけだ。"これ"が指しているのであろう添付ファイルを都筑くんが開き、私は絶叫した。


「やだー!」

「お、いいじゃん、これ」

「やめて、消してよ!」

「なにバカ言ってんの」


私の手を軽々とよけて、見ている前でダウンロードされてしまった写真は、私が控え室でうたた寝しているところを撮ったものだった。
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