イジワル御曹司に愛されています
うっと言葉に詰まった私の頭を、こらしめるようにぐいぐいと枕に押しつける。苦しい。


「撮らないから、泊まっていい?」

「絶対だぞ、約束破るなよ」


約束という言葉の幼い響きに、思わずくすっと笑ったところを見とがめられて、慌てて「破りません」と誓った。

なんだろうね、完璧すぎるくらい"かっこいい"要素に恵まれているくせに、なんでかかわいくて、困っていると助けてくれて、危ないときは守ってくれて、けれどふとしたときに、手を差し伸べてあげたくなる。

元気も勇気も、いくらだってあげるよ、私でいいなら。

一緒にいたいよ、私だって。

新しい場所でがんばる姿、一番そばで見ていたいもの。

胸を満たす甘い幸せは、つぶやきとなって口からこぼれた。


「どれほど好きか見せてあげたい」


さっきまでの名残で、ちょっと不機嫌さを見せていた顔が崩れ、一瞬驚いたような、照れくさそうな戸惑いを見せる。

それから考え込むように目が宙を見つめ、なにやら自信ありげな顔つきになって戻ってきた。


「俺ほどじゃないと思う」


キスもまともにできないくらい、ふたりで笑った。





Fin.

──Thank you!

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