イジワル御曹司に愛されています
着ていこうと思っていた服が洗濯されていなかったとか、行きたかった店が行列で整理券入場になっていると情報が回ってきたとか、そういうくだらない理由の積み重ねで。
バカバカしくなったので『時間もったいないから学校行く』と言って出てきたのが二時間ほど前の話。
その間もひっきりなしに文句が携帯に届き、果ては電話までしてきた。しかもいつの間にか苛立ちの矛先が名央自身へとすり替わっていたので、服と店はどこ行ったんだと指摘したら手が付けられなくなった。
本人いわく"ちょっと慰めてくれたらよかっただけなのに"とのこと。そんなんでいいなら最初から騒がなければいい。
『好きでもないものに時間を割くのは、人生の無駄だからやめなさい』
「好きなことだけして生きていくことはできませんて久芳さんに教わったし」
『陽一からのプレゼントを渡すの、やめましょうか』
「黙るよ」
『なんてね。もう郵送してしまったので私にはやめることもできないんです。今日届くと思いますよ』
早く言えよ、と携帯を肩に挟んで帰り支度を始めた。父がなにか贈ってくるときは、たいてい書籍だ。自分が読んだものをそのままお下がりでくれることもあるし、新本をくれることもある。
経済や経営、セールス、マーケティング、販促、コーポレートブランディングと内容は多岐にわたり、大企業と言って差し支えない家業を牛耳っているトップを満足させただけあってどれも面白い。届いたらすぐ読みたい。
「親父、具合はどうなの」
『最近は会社にも行っていますよ。名央もお酒と食事には気をつけなさい。陽一の身体を蝕んでいるのは、かのモーレツ時代の無茶が祟ったんです』
「俺、そんな飲めねーもん」
『比べる相手がおかしいだけで、名央も十分飲める体質ですよ。陽一と私を基準にしないように』
かっこいー。自分は格上すぎるから基準にならないとか、言ってみたい。
耳元で、ツツツ、と電子音がした。携帯を確認して、眉根が寄る。
「ごめん、電話来ちゃった」
『どうしてその女性とつきあってるんです?』
いきなり投げられた根本的な質問は、根本的すぎて考えたこともない内容だった。どうして彼女とつきあっているのか? どうして彼女なのか?
「ナンパされて…」
『それはきっかけでしょう。理由を聞いているんです』
「…美人で、スタイルもいいから、一緒に歩いてると気分いい」
バカバカしくなったので『時間もったいないから学校行く』と言って出てきたのが二時間ほど前の話。
その間もひっきりなしに文句が携帯に届き、果ては電話までしてきた。しかもいつの間にか苛立ちの矛先が名央自身へとすり替わっていたので、服と店はどこ行ったんだと指摘したら手が付けられなくなった。
本人いわく"ちょっと慰めてくれたらよかっただけなのに"とのこと。そんなんでいいなら最初から騒がなければいい。
『好きでもないものに時間を割くのは、人生の無駄だからやめなさい』
「好きなことだけして生きていくことはできませんて久芳さんに教わったし」
『陽一からのプレゼントを渡すの、やめましょうか』
「黙るよ」
『なんてね。もう郵送してしまったので私にはやめることもできないんです。今日届くと思いますよ』
早く言えよ、と携帯を肩に挟んで帰り支度を始めた。父がなにか贈ってくるときは、たいてい書籍だ。自分が読んだものをそのままお下がりでくれることもあるし、新本をくれることもある。
経済や経営、セールス、マーケティング、販促、コーポレートブランディングと内容は多岐にわたり、大企業と言って差し支えない家業を牛耳っているトップを満足させただけあってどれも面白い。届いたらすぐ読みたい。
「親父、具合はどうなの」
『最近は会社にも行っていますよ。名央もお酒と食事には気をつけなさい。陽一の身体を蝕んでいるのは、かのモーレツ時代の無茶が祟ったんです』
「俺、そんな飲めねーもん」
『比べる相手がおかしいだけで、名央も十分飲める体質ですよ。陽一と私を基準にしないように』
かっこいー。自分は格上すぎるから基準にならないとか、言ってみたい。
耳元で、ツツツ、と電子音がした。携帯を確認して、眉根が寄る。
「ごめん、電話来ちゃった」
『どうしてその女性とつきあってるんです?』
いきなり投げられた根本的な質問は、根本的すぎて考えたこともない内容だった。どうして彼女とつきあっているのか? どうして彼女なのか?
「ナンパされて…」
『それはきっかけでしょう。理由を聞いているんです』
「…美人で、スタイルもいいから、一緒に歩いてると気分いい」