イジワル御曹司に愛されています
つながる思い出
「面白い企画だね」


私が説明を終えると、打ち合わせに参加していた8名のうちのひとりが、何度もうなずいてそう言った。


「ね、新しい試み」

「できる限り協力するよ。ここまでの計画お疲れさま。これ以降は、みんなで分担しよう」


同じ部署の面々の心強い言葉は、嬉しくて安心する。


「新技術の部分は僕がやろう。出せる情報全部出したいし」

「私、別件で環境の遷移をまとめていたところなので、それ使って資料作ります。監修についてくれる先生もいるし、ちょうどいいわ」

「東京の、ある一か所の話っていうのがいいよね、話が広がりすぎなくて。じゃあ僕は協会の沿革とプレゼン原稿作り」


さすがベテラン勢は、自分になにができるのかわかっている。目まぐるしいほどにぽんぽん話が決まっていくのを、置いていかれかけながら見ていた。


「あの、ありがとうございます。半年後の実施までの間、定例会を設けようと思いますので、またご連絡します」

「了解。初回は来週かな。それまでに各自、プロットとサンプルを用意するってことで」


賛成、と全員が同意してお開きとなった。

私は席に戻るとすぐ、電話をかけた。


『はい』

「あっ、都筑くん? あのね、今時間いい?」

『うん、ちょうどお前んとこ向かってるんだ。展示会のポスターとフライヤーが刷り上がったからさ、取引先さんなんかにもぜひ声掛け…』

「こっち、来るところなの?」

『え、そうだよ』

「あのっ、話したいことある!」

『え? あ、了解。着いたら電話入れる』


私の勢いに若干押された感じだった都筑くんからは、10分もしないうちに連絡が来た。相変わらずひょこひょこしながら受付へと急ぐ。

ロビーの窓際に並べてある、四角いブロック状のソファに腰かけていた都筑くんが、私を見るなり立ち上がってこちらに来た。


「なにやってんだよ、そんな足で急ぐな」

「あのね、松原さんが部内に声かけて、チームを組んでくれたの」


いきなりしゃべりだした私に、都筑くんが「え?」と目を丸くした。
< 42 / 196 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop