イジワル御曹司に愛されています
──別れ際、都筑くんがついでのように言った。
「この間も言ったように、これからは倉上メインで動く予定だったんだけど」
乗り換え駅の改札を出たところで、別の路線に向かう私を呼び留めて。
「うん…?」
「俺もこれまでと変わらず対応させてもらうことになったから」
「え?」
「御社の松原さんが、都筑を気に入ってくださっているようだったので。こいつはステイってことで。僕と都筑の二名体制で対応させていただきます」
「あっ…、そうなんですか」
とっさに言葉が出なかった。
「あの、大丈夫なんですか、そんなことしていただいて」
「誰がフロントを務めるかってだけの違いだから。窓口やってなくても俺はここの仕事してるし。ってこれも前に言ったよな」
「というわけで、微差の新体制、よろしくお願いします」
にこっと倉上さんが微笑み、改札のほうへと足を向ける。連なって行くそぶりを見せた都筑くんが、ふと私のほうへ一歩戻った。
「言っとくけど上司判断だからな。俺が言いだしたわけじゃない」
「…そう」
「よろしく。お前は嫌だろうけど」
冷たい一瞥。私は感情を顔に出さないように、必死だった。
「…別に、嫌じゃないよ」
「あ、そう? じゃあな。松原さんによろしく。お疲れ」
ふいと背中を向けて、倉上さんに並び、さっさと行ってしまう。
慣れない駅で、置いていかれたような心細さの中、あの背中を見送るもんかと自分の路線の改札を目指した。
なんなの、もう。
なんでこんなことになったの。
ちょっとだけ見えた、あの淡い光は、いったいどこへ行ってしまったんだろう。
「この間も言ったように、これからは倉上メインで動く予定だったんだけど」
乗り換え駅の改札を出たところで、別の路線に向かう私を呼び留めて。
「うん…?」
「俺もこれまでと変わらず対応させてもらうことになったから」
「え?」
「御社の松原さんが、都筑を気に入ってくださっているようだったので。こいつはステイってことで。僕と都筑の二名体制で対応させていただきます」
「あっ…、そうなんですか」
とっさに言葉が出なかった。
「あの、大丈夫なんですか、そんなことしていただいて」
「誰がフロントを務めるかってだけの違いだから。窓口やってなくても俺はここの仕事してるし。ってこれも前に言ったよな」
「というわけで、微差の新体制、よろしくお願いします」
にこっと倉上さんが微笑み、改札のほうへと足を向ける。連なって行くそぶりを見せた都筑くんが、ふと私のほうへ一歩戻った。
「言っとくけど上司判断だからな。俺が言いだしたわけじゃない」
「…そう」
「よろしく。お前は嫌だろうけど」
冷たい一瞥。私は感情を顔に出さないように、必死だった。
「…別に、嫌じゃないよ」
「あ、そう? じゃあな。松原さんによろしく。お疲れ」
ふいと背中を向けて、倉上さんに並び、さっさと行ってしまう。
慣れない駅で、置いていかれたような心細さの中、あの背中を見送るもんかと自分の路線の改札を目指した。
なんなの、もう。
なんでこんなことになったの。
ちょっとだけ見えた、あの淡い光は、いったいどこへ行ってしまったんだろう。