イジワル御曹司に愛されています
「…八つ当たりだったの?」

「よく考えてみたら、そうだった」

「あの、じゃあ、私もごめんね、なんかひとりでふてくされてて…」

「それほんとに意味わからなかった。なんだったんだ?」


うっ…。


「わ、私も、八つ当たりみたいなもの…だったかも」

「…へえ?」


我ながら適当なことを言っていると思いつつ、本当のところ、そう遠くない気もしてきた。あれ、実際八つ当たりだったよね、たぶん…。

不思議そうにこちらを見ていた都筑くんが、「足大丈夫か」と聞いてきた。


「あっ、うん、大丈夫。びっくりしたけど」

「悪い、力加減ミスった。あと捻挫のことも忘れてた」

「それはもう完全に治ってるから、平気だよ」

「そっか」


そう安心したように微笑む都筑くんが、じっと私の足首を見ているので、居心地が悪くて、隠すように脚を折った。


「お酒かける必要、なかったよねえ?」

「ぶっかけてやりたくなるじゃん、あんな奴。ほんとはお前がやってやりゃよかったんだよ」

「無理だよ、怖いし、しらばっくれられたらただの被害妄想扱いだし…」

「怖いことないだろ、あんなメタボのおっさん」

「怖いんだよ。どんな男の人でも、なんでかわからないけど怖いの。悔しいけど」


ふーん、と興味があるのかないのかわからない様子で聞いている。やっぱり男の人には理解できないんだろうなと残念に思ったとき、彼がぽつりと言った。


「なら、助けてやれてよかった」


…中身まで別人になったのかな。

それとも私が知らないだけで、昔からこういう、穏やかな優しさを持っている人だったのかな。

未沙ちゃんに聞いてみればよかった。どんなところを好きになったのって。
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