イジワル御曹司に愛されています
「内部に、まあ俺の味方もいて。その人がやっと入れるようにしてくれたんだ。反叔父派をうまく使ったのかもな。親父の一派は、俺を入れたいはずだから」

「都筑くんは…お父さんを応援したいの?」


彼が口をつぐんだので、私は慌ててしまう。


「あの、無理に話してくれなくても」

「今さらなに言ってんだ」


ですよね…。

眉をひそめられておとなしく黙ると、都筑くんは少し考えて、口を開いた。


「俺は正直、誰をとかあんまり興味ない。今は親父が、社長っていう大変な立場だから、力になりたいと思うけど、正しい手続きで叔父がその跡を継ぐなら、それでもいいと思ってる」

「でも、都筑くんを閉じ込めたのは、叔父さんなんだよね…?」

「まあ」


都筑くんのその考えは、伝わっていないんじゃないの。単純に、お父さんの味方だから、イコール叔父さんの敵として認識されているんじゃないの。

飲み干したらしく、都筑くんがカップを振って確かめた。私のほうに手を伸ばすので、空になったカップを渡すと、カフェの横のゴミ箱に捨ててきてくれる。


「俺、行くよ」

「あ、うん、ごめん、遅くなって」


私が立ち上がるのを見守りながら、都筑くんが優しく首を振る。その姿を見ていたら、不安になった。


「都筑くん…ほんとに大丈夫?」

「大丈夫だよ」


重い話をしてしまったのを詫びるような、困った微笑み。私が納得していないのを感じたんだろう、都筑くんがふと大きく息をついて、車道のほうに首を巡らせた。


「俺、親父のことは、昔から尊敬しててさ」

「そうなの…」

「叔父だって、こんな争いを始めるまでは、いい人だったわけ」


横顔が、通りすぎる車のライトに照らされる。ぼんやりと、どこを見ているわけでもないような顔。
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