イジワル御曹司に愛されています
「なんか、疲れた」
ぽつりと吐かれたその言葉が、都筑くんの本音のすべてだったように思えて、胸が痛んだ。
あっ、マフラーしたまま帰ってきちゃった!
と気づいたのはフロアに入ってからだった。
「千野さん、この間の法改正の内容って、どこかにまとまった資料あったっけ?」
慌てて外してバッグにしまったところに、松原さんがやってくる。
「はい、あります」
「ごめん、教えて」
私は壁際のキャビネットの前に行き、バインダーの背表紙をたどった。
「環…告示…これですね。水質保全の統計も出しておきます?」
「ありがとう、助かる」
二冊のバインダーを出して渡すと、その場で開いて読みはじめる。急ぎの案件というよりは、内容をさらっておきたかった様子だ。
「あの…」
「うん?」
「株主総会って」
「株主総会?」
唐突すぎたらしく、目を剥かれてしまった。
「どうしたの、社会勉強?」
「いえ、えーと、あの、例えばですね、すごくたくさんの株を持った株主が、総会に参加するのを妨害するような動きがあったとして」
「サスペンスドラマでも見たの?」
そんなところです、とあいまいに濁した。
「その目的って、なんなんでしょう?」
松原さんは親切にも、うーんと本気で考えてくれている。
ぽつりと吐かれたその言葉が、都筑くんの本音のすべてだったように思えて、胸が痛んだ。
あっ、マフラーしたまま帰ってきちゃった!
と気づいたのはフロアに入ってからだった。
「千野さん、この間の法改正の内容って、どこかにまとまった資料あったっけ?」
慌てて外してバッグにしまったところに、松原さんがやってくる。
「はい、あります」
「ごめん、教えて」
私は壁際のキャビネットの前に行き、バインダーの背表紙をたどった。
「環…告示…これですね。水質保全の統計も出しておきます?」
「ありがとう、助かる」
二冊のバインダーを出して渡すと、その場で開いて読みはじめる。急ぎの案件というよりは、内容をさらっておきたかった様子だ。
「あの…」
「うん?」
「株主総会って」
「株主総会?」
唐突すぎたらしく、目を剥かれてしまった。
「どうしたの、社会勉強?」
「いえ、えーと、あの、例えばですね、すごくたくさんの株を持った株主が、総会に参加するのを妨害するような動きがあったとして」
「サスペンスドラマでも見たの?」
そんなところです、とあいまいに濁した。
「その目的って、なんなんでしょう?」
松原さんは親切にも、うーんと本気で考えてくれている。