悪魔くんとナイショで同居しています
次咲くんが咄嗟に取り返そうと手を伸ばすと、
「サンキュー、次咲。財布だけは明日返してやるよ!ぎゃはははっ」
素早くズボンのポケットに財布を入れてしまった。
「じゃあな、次咲。力士、ゲーセン行こうぜゲーセン」
「おう!行こう行こう」
二人は目に涙を浮かべ返してくれと訴え続ける次咲くんを完全に無視し、颯爽と自転車に跨った。
「お願いだから返して下さい!」
自らの自転車を放り投げ、走り出した二人を懸命に追いかける次咲くん。
なんとかしなきゃ……なんとかしなきゃ。
あっ、そうだ。
こんな時こそ……アーラから授かった悪魔の力が使えるかもしれない。
よし、一か八かだ。
次咲くんを救うには、とにかくやるしかないっ。
アーラが言っていたように、右手の人差し指をステッキのように振った。
「こっ……壊れろ!」
壊したい物は園山くん……の、自転車だ。
多少の足止めにはなるはず。
そしてその隙に、園山くんからどうにか財布を取り返すって作戦。
って、あれ……?
ちゃんと園山くんの自転車を指差したのに、壊れないじゃんか。