悪魔くんとナイショで同居しています
それでもまぁ……
辛くて悲しいばかりの、この世界で生き続けていくよりはいいのかな。
「あっ、次咲くん!」
アーラと並んで住宅街を歩いていると、先を歩く次咲くんの背中が目に入った。
次咲くんの耳に私の声が届いたようで、すぐに顔を向けてきた。
すかさず手を振ると、いつもは振り返し駆け寄って来てくれるはずなのに……。
「あ、あれ?」
次咲くんは手すら振ってくれず、それどころか逃げるように走り出してしまった。
「なんだ?アイツ」
崇拝している大悪魔様に対しても、私に対しても。
あからさまに無視をするような行動を取られたのは、初めてだった。
「……よくわかんない」
「まぁいいんじゃね?放っておけば」
本当は……次咲くんを怒らせてしまった原因はなんとなく分かるけど。
私が、アーラを信じることにしたから。
彼の忠告を跳ね除けて、アーラの隣にいることを選んだから。
「そうだね」
何よ。
元はといえば、次咲くんが悪いんじゃない。
次咲くんが欲に駆られて悪魔を召喚したから、アーラが現れたんじゃない。
私が死ななきゃいけないんじゃない。