悪魔くんとナイショで同居しています




玄関から出てすぐに見えるのは、ずらりと並ぶ住宅。

私は幼い頃からずっと、この街で育って来た。



自宅の横にある空き地で、かくれんぼや鬼ごっこをしたこともあった。

雨さえ降らなければ、ほぼ毎日のようにそこにいたっけ。



その先にある公園で、お母さんと一緒に自転車の練習をしたこと。

なかなか乗れなくて、泣きながらペダルを踏んでいたんだよね。



公園の入り口に立つ自動販売機の裏に、お母さんが五百円を落として取れなくなったこともあったっけ。

お母さんが必死になって取ろうとしてて、私は横で大笑いをしたんだよね。



住宅街を抜けてすぐに目に入るのは、ずっと先まで続く小川。

その横の道を、私は何年にも渡って歩いてきた。



隣にはいつだって紗千がいた。

ランドセルが重たいね、なんて言いながら休み休み歩いたこともあったよね。



野良犬を追いかけたり、草花を千切ったり、虫を見つけては手を伸ばしたり、それはそれはもう……

目に入るもの全てが面白くて、楽しくない日なんて無かったなぁ。



紗千の好きな人を聞いたのも、この土手沿いだったよね。

恋愛に興味がない私にとって、あれはかなり衝撃的だったんだから。



他にも……この道だけでも数え切れないほどの思い出があるよ。




< 297 / 360 >

この作品をシェア

pagetop