悪魔くんとナイショで同居しています





「おいっ、奏!」

「わぁぁっ、びっくりしたぁ!」



脳裏を巡る思い出の数々に瞳を潤ませていると、いきなり背中を叩かれた。



振り返らなくても、それがアーラだってことは分かっていた。



「今……奏って言った?」

「はぁ?言ったけど?」

「えっ?!嘘っ!」



あのアーラが?

黒羽モードの時でもなく、オラオラモードの……あのアーラが?

いつも“お前”ってしか呼ばなかったのに?!



私のことを……奏って呼んでくれた??



「奏だなんて初めて呼んでくれたねっ!」

「それが何なんだよ?」

「嬉しいんだよぉ」



アーラはそんなことの何がそんなに嬉しいんだ、なんてぼやいているけど……。

また一つ…距離が縮まったってことだもんね。



嬉しいに決まってるよ。



「もう二度と呼ばない」

「えぇーっ?なんでそんなこと言うの?」

「喜ぶ顔が気に食わないんだよっ」



なんて悪態をつきながらも、隣を歩いてくれている所に優しさを感じた。

それでまた、嬉しくなる自分がいた。





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