悪魔くんとナイショで同居しています
「別に……怒ってるとかじゃねぇ。ちょっと、自分が自分じゃないみたいで気持ち悪いだけだ」
「え?どういう意味?」
「じゃあな」
あっ、待ってよ!
咄嗟に声を上げたけれど……
瞬時にして猫に姿を変え、茂みに身を消したアーラにその声は届かなかった。
自分が自分じゃないみたいで気持ち悪い?
それは……何の事を言っているんだろう?
次咲くんを助けたこと?
あの行動は確かに、悪魔らしくなかったもんね?
「うぅ……いくら考えたって分からないよ」
ドライヤーで髪を乾かしていると、ついつい心の声が漏れてしまった。
アーラが考えることはいつも分からない。
何か裏があるのか……それとも嘘偽りの無い優しさなのか。
それさえも分からないよ。
……まぁいいや。
いくら頭を捻ったところで答えは出そうにないし。
また戻って来た時にでも聞いてみることにしよう。
ベッドに寝転がり、漫画を手に二次元の世界へ入り込もうという時に……
「奏ーっ!ジュース買ってきてくれないー?」
バッドなタイミングで階段下からお母さんの声が聞こえてきた。