悪魔くんとナイショで同居しています





「俺は事実を言ったまでだ」

「でも……次咲くんは後悔していたんだよ。イジメの報復をしたことを、後悔していたんだよ?」



アーラは深いため息を漏らすと、顔を向けてきた。



そしてやけに真面目な顔で、

「人を不幸にするということは、そういうことだ。人生を変えてしまうということ。まぁ対象者を殺さなかっただけ、感謝してもらいたいくらいだ」

また一段と大きなため息を吐いた。



悪魔と契約を結ぶ。

それがどういうことなのか、私達は何も分かっていなかったという事だね。



悪魔を召喚する人は、叶えて欲しい願いがあるから。

幸せになりたいから。



次咲くんだってそうだ。

イジメっ子達を不幸にして、自分が幸せになるつもりだった。



でも……願いが叶ったって、次咲くんは幸せなんかじゃないだろうな。

後悔の念にかられ、涙を流す姿は決して幸せじゃなさそうだった。



「イジメの報復なんてしなくても、因果応報は必ずある。何らかの形で奴らには不幸が訪れるんだよ。俺は何百年にも渡り、そんな人間共を見てきたんだ」



そう呟いたアーラはまるで、契約は無駄だったと言わんばかりだった。

眉をしかめながら次咲くんの背中を見つめる姿は、まるで哀れんでいるようにも見えた。





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