悪魔くんとナイショで同居しています





「……はぁ」



何やってんだろう…私。

今日で最後の学校だっていうのに。



登校時間はとっくに過ぎているのに、土手沿いで腰掛けていた。



風になびく草木。

きらきらとせせらぐ小川。

川辺で釣りを楽しむ人影。



ここは、以前にアーラと並んで座った場所だ。

そして紗千とも…たくさん会話をした場所でもある。



だって、こんなに美しい景色を見ることはもうないんだもんね。

この目にしっかりと焼き付けておかなきゃ。



「あはは…。また涙が出て来ちゃったよ」



どれだけ泣けば涙は枯れるんだろう。



「って……泣いてる場合じゃないよね」



そろそろ学校に行かなきゃ。

みんなに…みんなに会いに行かなきゃ。



「……よしっ!行っくぞーっっ!」



両頬をバシンと叩くと、人目もはばからず気合いの入った声を張り上げた。



もう泣かないっ!

最後くらいは笑って過ごさなきゃっ。

悲しい思い出で終わらないように。




< 335 / 360 >

この作品をシェア

pagetop