悪魔くんとナイショで同居しています





アーラは深くため息を吐くと、何も答えることなく次咲くんから視線を外した。



そしてアーラと目が合った。



「待たせたな、次はお前の番だ」



……鮮やかなまでの無視とくれば、次咲くんの願いは拒否ってことだよね。

やっぱり私は、魔界に行かなきゃならないんだね。



「奏ちゃんっ!」



次咲くんが泣きながら叫んでいる。



「大丈夫だよ、次咲くん」



大丈夫。

怖くなんてない。

もうとっくに覚悟は出来ているんだ。



皆とお別れだってちゃんとしてきた。

いつでも魔界に行く心構えは出来ている。



アーラが目の前に立った。

手を伸ばせば届くほどの距離で。



そして私はこれから、アーラに手を引かれて魔界に行くんだ。



すると突然、

「……えっ?」

アーラに抱きしめられた。



「ちょっ、アーラ?!痛いよ…どうしたの?」



腕を叩いてみたり背中を叩いてみたり、それとなく離して欲しい意思表示をしてみても……

アーラは手の力を込めるばかりだった。



そして彼らしくない消え入りそうな声で、

「やっぱり……お前は魔界に連れて行けない」

そう囁いた。




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