悪魔くんとナイショで同居しています





「じゃあ、邪魔が入る前に俺はさっさと帰る。お前は早く帰って寝ろよ」

「ま……待ってよアーラ!まだ行かないでよ!」



離れようとするアーラの胸にしがみついた。

絶対に離さない。

離したらもう二度と会えないんだ。



「…お前みたいな人間には初めて会ったよ。悪魔である俺を守ろうとしてくれたのも、涙を流してくれたのも。ありがとうな」

「やだ……そんな、アーラらしくないこと言わないでよ。これじゃあ…本当にもう会えないみたいじゃんかぁっ」



まだ私、お別れなんて出来ないよ。

したくないよ!



「好きだ」

「うん……うん、私もだよぉ」



涙でぐしゃぐしゃになった顔を上げると、軽く触れるような優しいキスが落ちてきた。



「ん…」



それは時間にするとほんの一瞬だったけど、私にはとても長い時間に思えた。



触れたと思ったらすぐに離れ、

「じゃあな」

朗らかな、見たこともないような優しい顔をしていた。



そしてアーラは八つの翼を羽ばたかせ、巨大な穴に吸い込まれるように、一瞬にして姿を消した。



「やだっ…!アーラっ!アーラ!行かないで!」



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