悪魔くんとナイショで同居しています




急いで教室に戻ると、

「あ……次咲くん」

なにやら必死な様子で、机の中を漁る彼がいた。



「あぁ……奏ちゃん」



次咲くんはハッと顔を上げ、力ない笑顔を返してきた。



「何か……探してるの?」

「うん。教科書が見当たらないんだ」



ちゃんと持って来たはずなのになぁ。

そう呟きながら机を漁り続ける次咲くんの目には、薄っすら涙が溜まっていた。



「私も探すの手伝うよ」



そんなことをしていたら、間違いなく授業に遅れるだろうけど。

このまま放っておくことは出来なかった。



「ありがとう。奏ちゃんだけだよ、そんなことを言ってくれるのは」

「あぁ……うん。そう?」



優しいね、だなんて言われたけど……。

そんなことないのにな。



だって私はいつも、イジメられている次咲くんを見て見ぬふりをしているのだから。

優しくなんてないよ。




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