悪魔くんとナイショで同居しています




「紗千!待ってよ!」



隅っこの目立たない席に座っている次咲くんの元へ、紗千が歩いて行く。

制止を求めても突き進む彼女の肩を掴むと、ようやく足を止めてくれた。



「何よ!」

紗千が苛立っているのがひしひしと伝わってくる。



「何も言わなくていいってば……」

「何でよ?男子にからかわれるよ?!」

「うん……そうだけど」



また次咲くんの彼女、とか言われるかもしれない。

もしかしたら私も……イジメのターゲットにされるかも?



だけど、

だけどやっぱり私は……。



「偏見は嫌いなんだ。そりゃあ次咲くんは不気味だしちょっと変だけど……悪い人じゃないと思うから」

「そんなんじゃ奏までイジメられちゃうよ!」



私は奏のことを心配してるだけなの!

紗千のその言葉は嬉しかったけど……



「ありがとう、紗千。でも次咲くんには何も言わないであげてよ」



普通に会話をする。

イジメを見てみぬふりをしている、せめてもの罪滅ぼしだと思ったんだ。




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