恋愛指南は乙女ゲームで
「やってみろ」

 丁度新たなカレを選ぶところだ。
 今野は、えー、と言いながらも楽しそうに男を選んで行く。

 何事も楽しむ性格の今野らしいといえばそうなのだが、選んでいるのは同性だぞ。
 大丈夫か、こいつ。
 友達を見る目も変わりそうだ。

「う~ん……。俺、俺様キャラに憧れてるから、こいつにしようっと」

 ああ、何かこいつが羨ましいぞ。
 こんなもんにもちゃんと楽しみを見出している。

 そうか、そういう風に考えるって手もあったな。
 無難な田村を選んだのが、今更ながらに俺らしいというか。

「何かさ、自分の駄目なところを知った気がするよ」

「え~、何? あっこいつ超俺様~。いきなり政子ちゃんに雑務押し付けてるし。う~ん、駄目だよ、これは。俺様っても、ちゃんと相手を見てキャラ出さないとね。ほら政子ちゃん、パニクってるし。『こんなこともできねーのかよ。新入りでもねーのに使えねーな』だって」

「最低だな」

 だからそいつにはしなかったんだ。
 俺様なんざ、単なる我が儘野郎だろうが。
 が、今野は俺を見て、ちちち、と指を振る。

「わかってないねぇ。これだけだと単なる嫌な奴だけど、俺様キャラってのはそうじゃない。見てな」

 言いつつ<選択してね>画面を見せる。
 選択肢は二つ。

<A.『すみません……』
 B.『そんな言い方しなくても……』>

 俺に眉間に皺が寄る。
 そもそもこの政子の性格が気に食わん。
 何でそんな卑屈なんだ。
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