恋愛指南は乙女ゲームで
 単なる実験台か。
 ただ先の今野の楽しみ方を見て、ちょっとわかったんだ。
 女向けのゲームとはいえ、逆の見方もあるのではないか。

 俺はスマホに視線を落とした。
 画面には爽やかスマイルのイケメンがいる。

 軽そうだが、優し気でもある。
 なるほど、こいつはモテそうだ。

「うん、こいつの言動をマスターしたお前に期待してるぞ」

 何をだ。
 このチャラ男と俺とは、なかなか差が大きいと思われるので、こいつの言動をマスターすることは至難の業だ。

 だが少々頂くのは、悪くないかもしれん。
 ……認めたくないが、俺も何気にこれを頼りにしているような気がする。

「怖ぇな。でもこれ、一般人にも当て嵌まるものか?」

 至極基本的なことを今更ながら聞いてみる。
 田村 暁を見てみても、俺に当て嵌まるところはなかった。

 まぁ無愛想なところは一緒といえば一緒だが。
 全面的に共感は出来なかったわけだ。

 政子の心情は、理解出来なくてもしょうがないとは思う。
 何といっても俺はこんなものを勧められるほど女心がわかってないらしいのだから。

 だけど男のほうにも共感できないってのはどうなんだ。
 ということは、ここに出てくるキャラってのは、男女問わず一般的思考とはかけ離れているのではないか?

 それともそれは、まだ一人しか知らないからか?
 キャラを変えれば自分と合った考えの奴もいるのか?

「……どうだろうな」

 今野が、あらぬ方向を見ながら、ぼそっと言う。
 ……おい。
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