恋愛指南は乙女ゲームで
「真理が見えたぞ。なるほど、だから俺は彼女と上手くいかないんだな」

「え、どういうこと?」

「お前が言っただろ。女子力どうこうより、元々俺には恋愛に発展する種がないわけだ」

 今野の顔が斜めになる。
 思い切り怪訝な顔で首を傾げているからだ。
 俺はノートを広げてそこに種を描き、そこからにょっと芽を出した。

「普通の奴は、この状態なわけだよ」

「……もやし?」

「で、彼女や彼氏が出来たら、ここに愛情という水をやってくれるわけ」

 今野の突っ込みを無視し、俺はそのもやしの上にジョウロを描いて水をやる。

「したら、芽はどんどん大きくなる。これがお互いの関係だ」

「ふむふむ。何となくわかるような」

「けど俺は、この状態なわけ」

 とんとん、ともやしの根っこの丸を指してから、俺はその横に新たに丸を描いた。
 そこからは、芽は出ない。

「つまり、この芽が元々の恋愛スキルってやつだよ。普通の奴は、芽が出てるんだ。この芽の分、上手く彼女や彼氏を扱えるわけだな。で、付き合ったらさらにそこにお互い水をやるから、さらにスキルアップする。芽は出てる状態だから、成長も速いだろ。けど俺は種からのスタートなわけ。彼女が出来たら水をやってくれるけど、種から芽が出るまでには、芽が出た状態からのスタートより格段に時間がかかる。で、それまでに相手が飽きるわけだな」

「なるほど!」

 ぱちぱち、と今野が手を叩く。
 我ながら上手い説明だったと思うし、そういうことなんだと理解できたんだが、何か自分で自分の首を絞めたような。

「致命的じゃねーか……」

 己の欠点をわざわざ自分で図解してしまった。
 しかもこれ、克服できるのか?
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