ガラクタ♂♀狂想曲
落としモノ
「————でさ?」
これでもう何回目だろう。
この子の恋バナ聞くの。
缶ビールを片手に、まだ火がついていない煙草を咥えている姿が、どこか大人ぶっているようにも見える子。
「昨日も一緒にご飯食べたんだけどさ、俺ずっと彼氏の話ばっか聞かされてたし」
そう言って丸いガラステーブルの前へすとんと腰を下ろし、いつものように手慣れた感じでカチリと煙草に火をつける、この子。
「いいなあ…何食べてきたの?」
「ええっとイタリアン? トマトいっぱい食べたって感じ」
「ふーん」
「あ、今度一緒に行く? 結構普通にウマかったけど——、ってその話じゃなくてさあ」
今日も"普通"に私の部屋へ上がりこんでいた。名前は——。
「てか彼氏の話なんて、俺あんまり聞きたくないのにさあ」
そう言って、だけど少し楽しそうに笑う。
「俺はあいつの悩み相談室かっての」
「なら、もう会うのやめたら?」
すると大袈裟に肩を落とし、私に向かって"ぶはあっ"と勢いよく煙を吐き出した。
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