ガラクタ♂♀狂想曲


「はあ…」


ひとりぼっちになった部屋でゆっくり息を吐き出せば、一緒に気の抜けた欠伸が出てくる。涙目になった目をこすりながらベッドへ目を移し、デンちゃんが寝ていたところをそっと撫でてみた。

やっぱり昨日のあれは、夢じゃない。

だって私は、あれからうとうとはしたけれど寝ていないのだし。そしてさっき、デンちゃんが言った言葉。


"瑠美の彼氏は、俺の親父"


あの瑠美が。デンちゃんのお父さんと…? そんなまさかとは思うけれど、年齢から言ってもありえない話ではない。

だけど——


「ありえる?」


そういえばデンちゃんから家族の話を今まで一度も聞いたことがない。だけどよくよく考えれば、私もまだ家族の話なんてしたことなどないのだし。

まだ知り合って間もない私たち——

ピチャピチャと水音が響くバスルームへ目を向ける。


"一緒に入る?"


そういえば今日は、このお決まりの台詞がなかった。

もしかしてデンちゃんはいまあの中で、またこっそり涙を流していたりするのだろうか。

だっていつも聞こえてくるはずの、呑気な鼻歌も聞こえてこない。


「………」


腰を上げ、そしてなぜか足音をしのばせながらバスルームへ足を向ける。シャワーの音は相変わらずとめどなく、だけどどこかリズムカルに聞こえてきた。

息を潜めていたことに気づき深呼吸。


「デンちゃん?」


すぐに耳を澄ましたけれど、シャワーの音に掻き消されているのか返事が聞こえない。

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