ガラクタ♂♀狂想曲
「俺さあ、」
そしてそこでまた言葉を止めてしまったデンちゃんは、溜めていた空気を全て出してしまうほどの息を吐き出す。それから私の肩に、ぽすんと頭を乗せた。
息苦しいほどの長い沈黙が、ことの重さを物語っているような気がしてならない。
「親父が許せなくて……、ほんと。どうすればいいのかわからないときがあるんだったら、それは昨日——」
だけどそこでまた言葉を飲み込んでしまったデンちゃん。そして息を吐き出し肩を落とす。
「デンちゃん」
「———なにやってんだよショコちゃん。服着たままで」
肩からひょいっと頭を上げたデンちゃんは、そう言って私の頬を両手で包み込んだ。
やっぱり本当だったんだ。
だってその表情を見れば、嘘じゃないことがわかる。向かい合った私たちはいま、見つめ合ってはいるけれど、デンちゃんの意識は考えごとをしているかのようにどこか遠い。
それは明け方に見たデンちゃん。
儚くて脆く、風が吹くだけでサラサラと崩れてしまいそうなほど、自らの気配を消していた、あの。だけどそれが返って痛々しく見え、かと言って掛けてあげられる言葉が見つからず。
「いつかアイツをぶん殴ってやる」
「……」
「それまでは、我慢する」
これは潔いのか、儚いのか。すでに傷だらけでボロボロにも見えるデンちゃんは、ひとりで立っているのが辛くなったとき、私の元へ来ているのかもしれない。
なんとなく、そう感じた。
「よしよし」
デンちゃんの頭を撫でた私。だけどこうしてみれば人はみんな、寂しい生き物なのかもしれない。
だってデンちゃんだけじゃなく、いまこうやっている私も——、寂しい。それぞれの気持ちが交差して、人は恋をすると寂しい。