ガラクタ♂♀狂想曲
ふたりの視線を揃って受けた携帯が恥ずかしがって震えている。いつかそんなことを思いたい、などと考えてみる。そしてデンちゃんの手は、私の胸から数センチ離れたところで止まった。
昨日の今日だ。瑠美とお父さんが付き合っていることだけではなく、何か不穏なことがあったに違いない。いつか話すといったデンちゃん。
「電話鳴ってるよ」
言われなくても気づいているだろうけど、どうするつもりなのか。だけどさっき携帯眺めていたから、きっと連絡待ち。
瑠美からの着信は、私の前で受けることがなくなっていたけれど昨日は無理矢理出てもらった。以前は瑠美からの電話で、あんなふうに険しく見える表情なんてしたことがなかったデンちゃんは帰宅後、気配を消し涙を流していて。
私が知らないだけで、事態はいろいろ動いているんだろうと思えた。
「出ないの?」
「出ない」
「そう?」
「うん」
「——だけど確認だけすれば?」
私はどうしてほしいのだろう、デンちゃんに。電話に出てほしいのか、それとも出ないでほしいのか。
だけどなにかあったであろうこの状況なのに、解決しないまま私のところにいてもいい? どうなのか。
長い沈黙のあと電話は切れた。