ガラクタ♂♀狂想曲
「デンちゃん…、ビール飲む?」
逃げてるわけじゃない。
だけど、どうしていいのかわからないそんなときがあるのなら——、昨日のデンちゃんも、こんな感じだったのかな。
「乾杯しよっか。ね?」
そしてデンちゃんの腕からすり抜けるように身を離し冷蔵庫を開けた。だけど空っぽだ。そういえば、昨日飲んじゃった。
「ねえデンちゃ」
覗き込んでいた冷蔵庫から顔を上げ、その姿を探せば、膝をぎゅうっと抱えた状態で座りこんでいるデンちゃん。膝の上に顎を乗せ、脇に置いた携帯を見下ろしていた。
「……」
そのまま言葉を飲み込んでしまう。一度息を吐き出した。
「ビール切れてるデンちゃん」
そう言って歩み寄れば、そのまま視線を私に向かってあげた。
「さっきの電話、親父だった。珍しい」
「へえ」
気のない返事をするも、デンちゃんの言葉を待っただけ。デンちゃんはふたたび視線を落とし、携帯を眺めている。
このまま話を続けようか、それともビールを買いに行くか。知りたいような、そうでもないような。
逃げてるだけなのかも。だけどまたデンちゃんが、どっぷり落ち込んでしまっても困るし。いや困るって言うか——