ガラクタ♂♀狂想曲
「酒飲むとさあ、ホントがらりと変わるんだよね。親父の奴」
ふたたび煙が充満し、視界をぼんやりと遮った。
「何もかも棄てて出て行ったお袋は、きっと賢い」
「……」
デンちゃんまで棄てていくだなんて。本当は、そう言いたかったけれど、なんとなく言えなくて。黙り込んでしまった。煙草の煙が目にしみて、視界が滲む。
するとデンちゃんは、まるでわかったかのような表情で微笑んだ。
「あいつは…、瑠美は——。俺が親父から引き離してやったのに。あんなに殴られてたのにも関わらず、親父の元を離れなくてさ」
そして膝に顔を埋めてしまう。
「あああぁぁあああああぁぁ……、なんか俺、超情けねえ。身体にいっぱい痣作ってるのに。俺に助けを求めてくる瑠美んとこ行ったら——」
「………行ったら?」
すると諦めたように息を吐き出したデンちゃん。
「怒るなよ?」
「——なに」
「怒らない?」
「だからなに?」
「あっち行ったら行ったで、残してきたショコちゃんばっか思い出して。なにやってんの俺、ほんと引く。自分で自分に引くマジやばい」
一気にそこまで喋ったデンちゃんの小さい頭に手を置いた。指に煙草を挟んだままだったので、それを抜いてあげる。すると私の手を掴むデンちゃん。