ガラクタ♂♀狂想曲

「酒飲むとさあ、ホントがらりと変わるんだよね。親父の奴」


ふたたび煙が充満し、視界をぼんやりと遮った。


「何もかも棄てて出て行ったお袋は、きっと賢い」

「……」


デンちゃんまで棄てていくだなんて。本当は、そう言いたかったけれど、なんとなく言えなくて。黙り込んでしまった。煙草の煙が目にしみて、視界が滲む。

するとデンちゃんは、まるでわかったかのような表情で微笑んだ。


「あいつは…、瑠美は——。俺が親父から引き離してやったのに。あんなに殴られてたのにも関わらず、親父の元を離れなくてさ」


そして膝に顔を埋めてしまう。


「あああぁぁあああああぁぁ……、なんか俺、超情けねえ。身体にいっぱい痣作ってるのに。俺に助けを求めてくる瑠美んとこ行ったら——」

「………行ったら?」


すると諦めたように息を吐き出したデンちゃん。


「怒るなよ?」

「——なに」

「怒らない?」

「だからなに?」

「あっち行ったら行ったで、残してきたショコちゃんばっか思い出して。なにやってんの俺、ほんと引く。自分で自分に引くマジやばい」


一気にそこまで喋ったデンちゃんの小さい頭に手を置いた。指に煙草を挟んだままだったので、それを抜いてあげる。すると私の手を掴むデンちゃん。

< 115 / 333 >

この作品をシェア

pagetop