ガラクタ♂♀狂想曲
「こんなヘンな話してごめん」
「普通じゃない?頭の中で考えるのは自由なんだし——…」
「——嫌いになってない? 俺のこと」
「なってないよ」
「だけど中途半端で、それに誰の、てか、なんの為にもなってないじゃん。むしろごみ以下。なさけない」
「……だから別に、そんなの普通でしょ。恥ずかしがることなんてないと思うけど。私は、話してくれて嬉しいし」
詳しいことまではわからないけれど、複雑な家庭で育ってきたデンちゃん。だけどいったいどうしたら、こんなふうに素直でかわいい人間に育っちゃうんだろう。
おそらく一般的な家庭で育ってきた私は、大学まで卒業させて貰ったのにも関わらず、就職もしないで男に貢いで……、デンちゃんより、もっと役に立たないダメな人間なのに。
「ショコちゃん。どうしてあいつは、逃げないと思う?」
首を振った。私にはわからない。だって瑠美とは、一度電話で話たことがあるだけだ。あのときの瑠美と、デンちゃんがいう瑠美が同じ人には思えない。
「人には、人それぞれ事情があるんじゃない? 私がわかることと言えば——」
「…——言えば、なに?」
顔を覗き込んで、私の返答を待つデンちゃん。その頬へ手を伸ばし、そっと触れた。
私がわかることと言えば——、わかっているのかも怪しいけれど。
だけど寂しい人の目には、囁くようにひっそりと優しい涙が流れる。デンちゃんのように。