ガラクタ♂♀狂想曲

『もしもし祥子? あ、そっか男と一緒? ビックリするだろうな、あんな写真』


耳元から聞こえてくる声を上の空で聞く。
私はデンちゃんを見つめ、携帯を耳に押し当てたまま固まってしまった。


『おい祥子』

「………わかったわ。明日まで待ってもらえる?」


すると少し眉をひそめたデンちゃんは私の手から携帯を奪い取るように、両手を使って無理矢理耳から引き離す。慌てて取り返そうとするも、それをスイスイ器用に避けたデンちゃん。

そして人差し指を自分の口へトンと当て、そのまま携帯を耳に押し当てた。じっと動かない。眉をひそめたまま。

この沈黙が、いったいあとどれくらい続くのか見当もつかず、カラカラになった喉へ無理矢理に唾を流し込んだ。


「おい」


するとデンちゃん。その低い声に、腰が抜けそうなほどびくっと体が反応してしまった。


「とっととクソして寝ろ」


そして私の手を取り、携帯を握らせる。


「——ショコちゃん?」


だけどもうさっきとは違う、いつもの声に戻っていた。頭が放心して黙り込んでしまう。

するとデンちゃんが真剣な顔で覗き込んできた。目に力が籠っているのが一目でわかる。


「いつから? 連絡ないっていってたよね? ずっと?」

「——今朝、デンちゃんが出て行ったあと、」

「ずっとあいつから、連絡あった?」


唇をかみ締めた。いつもとなんら変わらない普通に見えるデンちゃんだけれど、いったいどこまで聞いたのだろう。

聞きたい。

だけど情けなくも、とにかく私の思考がうまく纏まってくれず、ただ首を振る。

< 127 / 333 >

この作品をシェア

pagetop