ガラクタ♂♀狂想曲
「——わかった。とりあえず、番号変えに行こう」
それは、
「だ、ダメ!」
「どうして」
「それはダメ!!」
だって、そんなことをすれば、あいつなら本当にばら撒きかねない。
「だ、大丈夫」
「なにが」
「番号変えるほどじゃない、と思う」
「これのどこが?」
「だってこれからは電話に出なければいいんだしッ? 着信拒否もできる。い、いざとなれば、警察にいえばいいんだし」
「……」
なかなか首を縦に振らなかったデンちゃんだったけれど、渋々頷いてくれた。
「それより、デンちゃんの傷は大丈夫?」
「——男の子ですから」
そしてリビングへ戻った私たちは、少しぬるくなってしまったビールへ口をつけた。やっぱり少し機嫌の悪いデンちゃんだけれど、一緒にTVを見ながら時間を過ごす。
ときどき大爆笑しているデンちゃんを見て、ほっと胸を撫で下ろした。
だけどここからが悪夢のはじまり。
携帯が何度も鳴る。
「なんかすごいね。さっきからショコちゃんの電話」
おそらくもうすでに、どこかへ貼り付けられたんだと思った。知らない番号やアドレスからの電話やメールばかりだ。
こういうの、私がお店に入っていたとき被害にあった子を知っている。その子が付き合っていた人がホストだったのもあり、あの狭い世界の中で瞬く間にあることないこと噂が広がってしまい、当時ナンバーだった彼女は店を辞めたし、彼氏のほうも揉めに揉めたと聞いていた。