ガラクタ♂♀狂想曲
こうなってしまっては、もう仕方がない。
遅かれ早かれ、いずれはデンちゃんの耳に入るかもしれないし目にしてしまうかも。それに、きちんと学業をこなしているデンちゃんだ。友だちにホストをやっていることまでバレてしまうかも。
うじうじしていないで、腹をくくらなくては。
「デンちゃんはしばらくうちに来ないほうがいい。それに携帯は明日ひとりで変えに行く」
「ショコちゃん?」
「いま私の過去の写真がどこかに貼られてる。多分番号とかアドレスも。だからこんなことに。デンちゃんに火の粉が飛ぶ可能性もあるから」
するとデンちゃんは、息を吐き出つつ頭をゆるゆると振った。
「どこに出回っているかわからないし、私と一緒にいるとデンちゃんにまで妙な噂がつく」
黙り込んだデンちゃん。
もうバラ撒かれたものは収拾つかないのだし、こんなことなら30万も払うんじゃなかった。ほんとバカだ私。
「大丈夫。俺のことは気にしないで」
ため息交じりで、力なくそう言ったデンちゃん。そして私の頭を数回、ぽんぽんと優しく叩く。
「デンちゃん」
「気にするな。もともと、どうせいい噂ないし」
「——だけど」
「ショコちゃんが大変なのに、このままほっておけないだろ? それにショコちゃん、明日は大事な面接とか言ってなかった?」
ああ、そうだ。
壁に掛かっているカレンダーに目を移す。赤のサインペンでグルグルと印がつけられていた。
「こんなの、なんくるない」
「だけど」
「あ、そうだ。番号はさ、返事待ちのところもあるだろうから、すぐには変えられないだろうけど、少しのあいだ我慢できる?」
そうだった。私は一応、就職活動中の身だ。
ようやく、これまでのクズな人生から這い出ようとしている私。だけど頭が回らなかった。そこまで自分の人生が落ちぶれていたんだということを身をもって知らされた気分だ。
「少し飲んで早く寝て、そんで気合入れて明日頑張って。ほら、乾杯」