ガラクタ♂♀狂想曲
流れモノ
デンちゃんは結局、あいつが電話口でどんなことを言っていたのか、どんな写真だったのか、無理に問いただすようなことは一切しなかった。
ただこの世の中には理解できない人がたくさんいるし、その人らにとっては自分も理解されない部類に入るんだと。
なにがあっても、いまさら別に驚かないと言って口元の傷をさすっていた。
だけどデンちゃんは、あの写真を知らないから。見ていないから、そんなことをいえたんだろうと思う。
もしあれを目にしたら、同じことなんて言えないんじゃないかな。
そしてなんだかんだ最低なテンションは続く。なぜ、みんなが就職活動に精を出していたとき、一緒に頑張らなかったのだろう。あんな男と一緒にいたいがために、人生を棒に振った気分。
それは自業自得ではあるのだけれど、気づくのが遅すぎ。これまで書類落ちを含めると、何社あるだろうか。
ひょっとすると、写真と一緒に本名まで書かれていているんじゃないだろうか。面接を終えたものの、まるで手応えがなく足取りも重い。
「おかえりショコちゃん」
「——あれ? 今日仕事でしょ?」
今日は入店する日なのにも関わらず、私の帰りを待っていたデンちゃん。そして見慣れないものがテープルに並んでいた。
「なにそれ?」
お札とカード? それと画面がバキバキに割れた携帯。
間違いない、あいつの物だ。
「取り返してきた」
「——それ、写真、見た?」
「見た」
すっと血の気が引いた。今日は、なんて日だ。
どこからなにを話せばいいのかわからず、言葉を飲み込んだ。