ガラクタ♂♀狂想曲
「お金も全部返してもらった。ちゃんとあるか、数えてみて」
私の手に札束を握らせてくるデンちゃん。だけど、あいつが受け取ったお金を使わないまま取っていたとは考えられない。もしかしたら足らない分をデンちゃんが足したのかもしれない。写真を見られただけでも最悪なのに、頭が痛くなってくる。
「——どうして、なんで見ちゃうかな」
「見たかったから」
いつもとなんら変わらないデンちゃんだけれど、いったい何がどうなってこうなったのか。耐え切れず目を閉じ、こめかみを押した。
「だけどどれも綺麗に撮れてたな。削除するのが勿体無いぐらいに。最高だった」
呆気に取られ言葉が出ない。
「あんなのネットで俺が見つけたら、そりゃお金払ってもいいぐらい」
ふざけた雰囲気ではなく、むしろ真面目な表情のデンちゃん。私の目を見て、言葉を選んでいるようにも見えた。
「だけどショコちゃんは、俺の前でのほうがもっといい顔してるから。それは俺だけしか知らないけどね。そして、その顔は、ショコちゃんも知らないし誰も知らない。俺だけの秘密」
「———っ」
空気が震えてる。違う、私の呼吸が、喉が震えている。
言葉が出てくれず、無意識に首を振っていた。唇も微かに震えてきたので、ぎゅっと噛み締めた。
「ほらショコちゃん座って」
すると私の手を取ったデンちゃん。
そのまましばらくのあいだ、ただじっと見つめあう。