ガラクタ♂♀狂想曲
「ショコちゃん、座って?」
いつまでたってもそれに応えず、突っ立っていた私の腰へ手を回してくる。そしてそのまま、抱き寄せられた。
くいっと顔を上げて下から見上げてくるデンちゃんは、どこか拗ねたような表情で口をへの字に曲げる。だけどなにも言わず。ポスンとそこへ顔を埋めた。
下を見ればデンちゃんの頭がある。戸惑いながらもそこへ手を伸ばせば、しなやかな髪が指先へ触れた。
「俺は本当にいい写真だなって、そう思った。だから泣かないで」
顔を上げないままそういったデンちゃんだけれど、なぜいま私が泣いているとわかったんだろう。そう思ったら、また涙が溢れだした。
「ショコちゃんが崩れる必要なんてないから」
「……う゛う」
堪えたくても涙は流れる。とうとう嗚咽が洩れそうになってしまい手で口を覆う。
「どうしてショコちゃんがこうなる? お願いだから泣くな。そんなの見たくない。———ほらショコちゃん。涙、涙」
自分の服の袖で、私の涙をチョンチョンっと抑えるようにして吸い取ってくれた。
どれくらいの時間が経ったのか。
ようやく涙も呼吸も落ち着きを戻す。デンちゃんの胸の中。見た目とは違って男らしく、頼りがいのあるそこへ頭をつけていた。
デンちゃんは私の肩を抱き、絶えずそこをずっとトントンと柔らかいリズムで叩いていた。けれど——、だんだんそれが変則的になり、いまはピタリと止まっている。
少し頭をズラせ見上げれば、デンちゃんは目を閉じていた。こんな体勢なのに、寝てしまったようだ。
だけど思い出したかのように、ふたたびデンちゃんの手が私の肩を叩きだす。変わらず目は閉じていているデンちゃんだけど——。そしてしばらくすれば、また手の動きもピタリと止まってしまった。
「ふふ」
思わず頬が緩む。そっとデンちゃんの頬へ手を伸ばした。
「あ」
短い声が上がり、急に伸びてきた手に腕を掴まれる。そしてゆっくりとデンちゃんの瞼が上がった。