ガラクタ♂♀狂想曲

「…——ショコちゃん?」

「うん」

「あのさ」

「うん」

「言っとくけど寝てないよ、俺」


だけどそういったデンちゃんの目はとろんとしていて、まさに寝起きの顔。デンちゃんもすぐそれに気づいたのか、テレたように短く笑った。

なんだかおかしくて、だけどなぜか声を落として揃って笑う。


「デンちゃん」

「ん、」


私の髪へ指を絡め、梳かすように頭を撫でるデンちゃんは、いつものように短く返事をした。


「ありがとう。私まだお礼を言ってなかった」


すると口を横に結び、やんわりと目を細めたデンちゃん。ちょこんと頭を下げそれに応えてくれた。


「悲しいことはさ、嬉しいことよりも長く感じてしまうじゃん。だけど喜びって、もともと短いものなんだって」

「どういうこと?」

「悲しいことばかり続くとき、そう思えば気持ちも晴れる」

「あー…、なるほど」

「納得?」


そしてくりっと目を見開き、ポンポンと私の頭を叩いた。


「だけど俺、あいつの顔ってあまり覚えてなかったから焦ったし」


まだ絆創膏を貼ったままのデンちゃんは、口の中が切れたのにも関わらずよく喋る。


「ここらのタウンページに載ってるパチ屋、全部しらみつぶしに当たったし」

「——ほんと?」


すると大きく頷いたデンちゃん。私がここを出たあと、すぐに行動を開始したそうだ。


「かなり時間食ったけど、なんかあっちが先に気づいてくれたみたいで。俺の顔見て逃げたから猛ダッシュで追いかけた」


そしてクイッと片眉を上げ、どこか誇らしげな顔をする。

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