ガラクタ♂♀狂想曲

「——また殴ったの?」

「ん、ちょこっと」


親指と人差し指のあいだを狭め、そのポーズをした。


「指が潰れてくれたほうがよかったかも——、だけど全然だし」

「指?」

「とにかく、これからショコちゃんは、何も心配しないでいいよ。俺あいつのおちんちんにリボンつけさせて、全身写真とかアップとかいろいろ撮ったから」

「——え」

「見る? ピンクのリボンにするか黄色にするか悩んだけど水玉にしてみた」

「え、えええ」


だけど思わず笑ってしまった。


「よかった。いつものショコちゃんに戻ってきた」


するとデンちゃんはそう言って、きゅっと口を結ぶ。


「いつもの?」

「そういつもの。俺のことが好きで好きで、もうたまらない〜〜って顔」

「………うそ?」


そこまで酷い? 思わず両手で顔を覆った。


「冗談だし」

「——酷い」

「じゃあ、ショコちゃん。俺はいつも、どんな顔してる?」

「知らない」

「俺のはねえ。"ショコちゃんが俺と一緒のとき笑顔だと嬉しい"って、そんな顔。覚えといて」

「反応に困るんだけど」

「なんか俺はショコちゃんと一緒にいると、時間が短く感じてしまう。人と一緒にいて、こんな気持ちはじめてかも」


それってデンちゃんの中では"好き"というのとは、また違うのだろうか? だけど、その疑問は飲み込んだ。瑠美のことは、ちゃんと"好き"と言っていたのだし。

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