ガラクタ♂♀狂想曲

「ショコちゃんは俺と一緒のとき、どう?」

「ヘンな質問しないでよ~」


私の気持ち、知っているくせに。さっきからなに。

だけど頬を両手で挟みこんできたデンちゃんが、そのままそっと口づけてきた。それはソフトなキスで。デンちゃんの口元に目をやれば、絆創膏が目に入る。


「まだ痛い?」

「だいじょうぶ」


デンちゃんの口が見惚れてしまうほど、ゆっくり動いた。視線を上げると、ふたたび顔が近づいてくる。

傷口に触れないよう、しっとりと唇を重ねあい、そして可愛く浅いキスを角度を何度も変えては繰り返し楽しんだ。

痛みは徐々に麻痺するものなのか、


「——ショコちゃん」


デンちゃんが数センチ唇を離した。

その目を見ると今日はもうこれ以上、手を出すつもりがないのかもしれない。あんなふうに言ってくれたデンちゃんだけど、写真を見たのだし。


「ショコちゃん」

「うん」

「ショコちゃんのスーツ、皺くちゃになる」

「……あ」


そうだ。
うっかりしていた。


「なんか気になって、落ち着かない」


そう言ってふっと表情を緩め、私から身を離したデンちゃん。そういえば、はじめてデンちゃんを見た日はスーツ姿だった。

ホストのデンちゃん。
周りの景色は覚えているけれど、肝心のデンちゃんの姿がもう色褪せてしまって、なんだか懐かしい記憶になっている。


「ところで愁くん、仕事は大丈夫?」


すると煙で咽たのか、ケホケホっと数回繰り返したデンちゃん。

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