ガラクタ♂♀狂想曲
「ショコちゃん。ちょっと待って」
「え、なに?」
するとプシュッと気前のいい音が部屋に響く。2本のうち1本を先に開けたデンちゃん。
「はいどうぞ」
「さっすが愁くん」
「俺もいただきまーす」
「あはは」
缶をコツンとあわせ、口をつけた。
「ええっと、どこまで話したっけ」
そして煙草へ手を伸ばしたデンちゃんは、考えごとをするかのように目線を上げ、眉を寄せる。今日はまだ話すつもりのようだ。
「お父さんの、お仕事まで聞いた」
「あ、そうそう。それだ」
さっき私が聞いたデンちゃんのお父さんの職業が、予想外だったのかと言われれば、そうでもなく。かと言って現実感があるわけもなく。
まだなんとなくわかったような、そんな雲をも掴むような感じ。
「お袋はさ、小5のとき出て行った」
「——そうなんだ」
そんな多感な時期。運賃だってまだ子ども料金なのに、デンちゃんを置いて出て行くだなんて。
だけどそんな母親のことを"賢い"と言ったデンちゃん。
「てか、なんか今日ちょっと語ってるし。こんな話は、べつにもういいか」
そして少しテレたように笑うデンちゃん。私はぶんぶんと首を振った。
「だけどショコちゃん、聞いても面白くないでしょ?」
「ううん、そんなことない。それどころか、なんか嬉しい。ええっと、嬉しいって言うのはなんかヘンだけど、私はデンちゃんのことをもっと知りたいって思ってる」
デンちゃんの両腕が伸びてきた。私の腕を取り、自分の足の間へ座らせる。背中から感じる体温。
だけどこれではデンちゃんの表情が見えなくなってしまうと思い、少し身体をズラせた。
すると私の頬を平手でペチペチと挟むデンちゃん。