ガラクタ♂♀狂想曲

「いま、瑠美は精神的に病んでて」

「——どうして…」


だけどそんなことを聞いたところでどうするのだろう、という疑問が一気に私の頭を支配した。


「親父はおろせと言ってて」


なにも言えなくて、そのまま口を結んでしまう。
デンちゃんは短く息を吐き出し、少しもたつきながらテーブルへ手を伸ばした。

私は、というと——、
こんなことへ首を突っ込んでもよかったのかと言う不安が、徐々に押し寄せてきていた。こんなのは、私が踏み込めるところじゃない気がする。

守ってあげるとか偉そうに思ったくせに、就職すら決まらずダラダラ過ごし、快楽の海にはスキップして出かけ。人並みにすら生きていない私なんかに一体、何が出来るというのか。


「…——ねえデンちゃん」

「わッ、ショコちゃん急にッ」


急に私が動いたせいで、取ろうとしていたビールが手につかなかったデンちゃん。勢い余って、缶が倒れてしまった。


「つべたっ、うわ…っ」


あちこちでシュワワッと泡のはじける音が小さく聞こえ、デンちゃんは慌てて立ち上がる。


「ショコちゃんティッシュ! てか、やっぱタオル!」

「——ゴメンねデンちゃん」

「ええ? ショコちゃんがなんで——、てか、こっちも垂れてきた!」

「ごめん」

「これは俺も悪いんだし、ほら立ってショコちゃん…っ!」


そう言ってデンちゃんは腕を掴んで立たせようとしてくれるも、なんだか膝に力が入ってくれない。きちんとデンちゃんへ伝えなければ。


「違うの、聞いて!」

「…ショコちゃん?」


そしてなにか迫るものを察したのか、そのままピタリと動きを止めたデンちゃん。

< 141 / 333 >

この作品をシェア

pagetop