ガラクタ♂♀狂想曲
「いま、瑠美は精神的に病んでて」
「——どうして…」
だけどそんなことを聞いたところでどうするのだろう、という疑問が一気に私の頭を支配した。
「親父はおろせと言ってて」
なにも言えなくて、そのまま口を結んでしまう。
デンちゃんは短く息を吐き出し、少しもたつきながらテーブルへ手を伸ばした。
私は、というと——、
こんなことへ首を突っ込んでもよかったのかと言う不安が、徐々に押し寄せてきていた。こんなのは、私が踏み込めるところじゃない気がする。
守ってあげるとか偉そうに思ったくせに、就職すら決まらずダラダラ過ごし、快楽の海にはスキップして出かけ。人並みにすら生きていない私なんかに一体、何が出来るというのか。
「…——ねえデンちゃん」
「わッ、ショコちゃん急にッ」
急に私が動いたせいで、取ろうとしていたビールが手につかなかったデンちゃん。勢い余って、缶が倒れてしまった。
「つべたっ、うわ…っ」
あちこちでシュワワッと泡のはじける音が小さく聞こえ、デンちゃんは慌てて立ち上がる。
「ショコちゃんティッシュ! てか、やっぱタオル!」
「——ゴメンねデンちゃん」
「ええ? ショコちゃんがなんで——、てか、こっちも垂れてきた!」
「ごめん」
「これは俺も悪いんだし、ほら立ってショコちゃん…っ!」
そう言ってデンちゃんは腕を掴んで立たせようとしてくれるも、なんだか膝に力が入ってくれない。きちんとデンちゃんへ伝えなければ。
「違うの、聞いて!」
「…ショコちゃん?」
そしてなにか迫るものを察したのか、そのままピタリと動きを止めたデンちゃん。