ガラクタ♂♀狂想曲
「……あのねデンちゃん、違うの」
「なにが」
立ちつくした状態で不思議そうにそういったデンちゃんだけれど、その表情がすうっと引いていくようにも思えた。それを見て、少しの躊躇——。
「ショコちゃん?」
「———あのね私、デンちゃんの力にはなれないかもしれない」
「……なに言って——」
「だっていまの話を聞いたとしても、私デンちゃんへ掛けてあげられる言葉が、なにも出てこない」
するとストンと私の目線の高さまで腰を落としてきたデンちゃんは、ゆっくりと首を傾げながら顔を覗き込んできた。私の言葉を待っているのか、じっと見つめられる。
「いまのデンちゃんの気持ちをわかってあげること…、出来ないと思う。ごめん」
「……」
するとデンちゃんは少し寂しそうに目を細め、それから両手で私の頬を包み込んだ。
「——ショコちゃん」
そこで一呼吸置いたあと、真剣な表情で続けて話す。
「ひとつ、お願いがあるんだけど」
「———私に、出来ることがあるのなら」
するとデンちゃんはすっと瞳を伏せ、私から顔を逸らせたあと、ゆっくりと息を吐きだした。そして顔を上げる。
「ただ、傍にいてほしい」
ぼそりとそう呟いた。
そして私のほうを向く。
「無条件で、隣にいてほしい」
「……デンちゃん」
「我侭でもなんでもいい。なんだったら、今日これのお礼でもいいから」
破壊された携帯を指差した。
「ショコちゃんは、そこにいるだけでいい。いま俺から離れないでほしい。---独りには、しないでほしい」