ガラクタ♂♀狂想曲
過去の男にことごとく裏切られ、つきあっていた頃は大好きだった翔にも、あんな形で——。しかも2度も裏切られた私は、どこか臆病になっているのかもしれない。
ひょっとすると人は愛を失うと、それと一緒に自信も失くしてしまうのでは。
こうしてデンちゃんの送り出すたび、気持ちを一度リセットすることを覚えてしまった。だって考え出すと止まらない。
いまこの状態がいつまで続くのか、続けられるのか。
些細なことで不安になる。
寂しさを埋め合うかのように求め合い、身体を重ねる日々。デンちゃんは変わらず、私の傍にいた。
そしてひとり残された部屋で手元にあった求人誌をパラパラめくりながら、意識を他へと飛ばす。就職活動は相変わらず上手くいっていない。けれど、このまま家で過ごすのは、金銭的にも精神的にも詰んでしまう。
「あー…」
だけど瑠美のやつ、どうしてなにかあるたびデンちゃんを呼び出すのかな。
「……」
ダメだな、私。
リセット、リセット。
「どれにしようかな」
いま私はアルバイトを探している。
就職活動しながらでも働くことはできるのだし、こうしてダラダラ過ごすよりはいいはず。——とは言っても、デンちゃんとすれ違いになるのは、やっぱり避けたいという邪念もあったり。
「あ、これだ」
目ぼしいところへは、すでに何個かチェックを済ませていたけれど、いま見ているところは最近オープンしたカフェだ。近すぎず、遠すぎずな距離にあり、なにより交通の便がいい場所。就職活動をしながらアルバイトをするならベストな立地だ。
「————ええっと、ゼロサンゼロ、の?」
早速携帯を手にし、記載されていた番号を確認しながら押していく。
そして発信を押す前に一旦手を止め、ディスプレイに表示された数字と求人誌の数字を何度か照らし合わせた。
「おっけ」
少し高鳴る胸に手を当て、携帯を耳に当てた。