ガラクタ♂♀狂想曲
しばらく続くコール音。
あのあと翔からの電話もなければ、いたずら電話も許容範囲に収まったので番号は変えていない。
『お電話ありがとうございます。More Betterです』
応対してくれた人は、若そうな声。
アルバイトにしては物腰が丁寧なので手短に用件を伝え、それからいくつかの質問を受けた。すると、いまから来てほしいといわれる。
「え、今からですか?」
時計に目をやれ19時半すぎ。
入れる時間を伝えたから、わからないでもないけれど。突然過ぎて意味もなく部屋をうろついた。
「じつは私、履歴書もまだ書いていません」
『こちらに来ていただいてから、書いていただいても構いませんよ』
人手が足りないのかも。
『明日でもこちらは構いませんが、この時間に連絡いただいたので、ひょっとすると空いているのではないかと思っただけです』
ひょっとしていま、私の意欲でも試されているのだろうか。
『——こちらは明日でも構いませんよ。お気になさらないでください』
「行きます」
どうせいま暇だ。
だけど、こんなのはじめてかもしれない。
さっさと出支度を済ませ、家を出て駅へ向かう。
身形はきちんとしたつもりだけれど、歩きながら鏡を取り出し最終チェック。
デンちゃんにはメモを残して置いたし、LINEも入れた。もし私より先に返ってくることがあっても大丈夫。
「うー」
さむい。
自らの身体を抱きながら、足早に駅へ向かった。