ガラクタ♂♀狂想曲
ラッシュの時間は過ぎていたけれど、まだ混み合う電車にカタコト揺られながら、こんな時間に乗るのは久しぶりなことに気付く。
キャバをやっていたころは、オープンから入り指名がないときは最終の電車に間に合うよう上がらせてもらっていた。ナンバーに入ることはなかったけれど、時給もいいし、待機をそこまで経験することなくダラダラと続けていた私。カフェの時給はキャバよりかなり少ないけれど、もうあそこには戻ることはないだろう。
「ここかな」
切り抜いてきた求人誌と照らし合わせれば、店の名前が一致していた。入り口のドアへ手を掛け、気持ちゆっくりそれを押し開ける。
すると店内はゆったりと広く落ち着いた雰囲気ではあるけれど、時間が時間だからなのか結構混み合っていた。
あちこちで聞こえる賑やかな声とともに、同年代ぐらいの女性がパタパタと歩み寄ってくる。
「いらっしゃいませ」
柔らかい笑顔で迎えられた私。
「お一人様でいらっしゃいますか?」
「——すみません。今日はこちらへ面接に伺ったのですが」
すると今度は、ぱあっと人懐っこい笑顔になった。
「ああ! はい! 津川さんですね? こちらへどうぞ」
ホールを抜け、厨房の脇を通っていくと従業員しか入れない扉があった。どうやらそこは休憩室になっているらしく、スナック菓子の袋や誰かからのお土産が平机の上に乗っている。
そしてその脇にさらに扉があった。私を出迎えてくれた人が、その扉をノックすれば中から返事が聞こえる。それは電話で私が聞いた声と同じ。
「——失礼します」
「はじめまして、こんばんは」
そう言って出迎えてくれた人は、スーツ姿の男性だ。私の目の前まで歩み寄ってきた。
「かなり急だったので、驚かれたのでは?」
「いえ…」
「うちはとにかくいま人手が足りないので、少し手荒だった気がしないでもないですが、こうやって足を運んでいただき、わたしも嬉しいです」
自らを"わたし"と言った目の前の男性は、見るからに若い風貌。この人が責任者だろうか?