ガラクタ♂♀狂想曲
「どうぞ、そちらにおかけください」
「——はい、失礼します」
これまでずっと、面接と言えば結構な風格のある人ばかりだったのもあり、戸惑ってしまう。見るから若いのに物腰は丁寧で、ひどく気後れしてしまう。
「実は、明日から早速お願いしたいのですが」
「あ、した…ですか?」
「はい、明日です」
急すぎる、どうしよう。それにデンちゃんに、まだなにも言っていない。
「私まだ、履歴書とか——」
「無理にとは言いません」
思わず黙り込んでしまった。
「深く考えていただかなくても大丈夫ですよ。こちらとしては断ってくださっても構いませんから。決断は早いほうが嬉しいですけれど」
「———あの…」
「どうされました?」
そしてクイっと首を傾げる。
「失礼ですが、連絡あったみなさんにも、こうやって同じことをお話しされるのですか?」
「いいえ。わたしがピンと来ただけです。それと、申し遅れましたが」
そして目の前に名刺を差し出してきた。
「わたしは、ここのオーナーで桐生大成(キリュウ タイセイ)と申します」
手渡された名刺には、きちんとそう書かれていた。だけどこんなに若い人が、この店のオーナーだなんて信じられない。私とそう年も変わらないように見えた。
「——津川さん」
「はい」
「どうされますか?」
「え、ええっと」
面接はこれだけ?
就職活動をしているので感覚が鈍っているのかもしれない。