ガラクタ♂♀狂想曲

「それでは、わたしはここで」

「ありがとうございました。明日から、よろしくお願いします」

「こちらこそ。では明日、お待ちしておりますね」


すっと頭を下げてきた。
なんだか恐縮してしまう。


「———あの」

「はい?」

「ゆっくりしておられますが、急がなくても大丈夫ですか?」

「ええ、大丈夫ですよ。ここから目と鼻の距離ですので、どうぞご心配なく」

「おひとりで?」

「はい」


さらりとそう言うけれど、男がこの時間にひとりで甘いものを食べている姿って想像するだけでも痛々しい。しかもこんな身形の人が、ひとりでだなんて、なにごとかと注目されるに違いない。


「ちょっと待ってください」


そして私はバッグからふたたび携帯を取り出し、履歴を確認した。


「——時間なら少しありますので、よければご一緒いたしますけれど…。まあ、私なんかでよければの話ですが」

「ええ、それはもちろん。光栄ですね」


デンちゃんからの連絡はまだだ。それにいま瑠美と一緒。時間つぶしと言っては申し訳ないけれど、結局一緒に行くことにする。


「どうぞ、乗ってください」

「あ、ありがとうございます」


驚いた。助手席のドアを開けてくれる。
車の種類まではよくわからないけれど、ただならぬ高級感で溢れていた。


「彼氏さんですか?」

「——え?」

「さきほどから、ずいぶん携帯を気にしていらっしゃる」

「あー…、ええ、まあ」

「いま向かっているお店は、若いカップルに人気のお店なんですよ」


まるで年配者のようにそういったオーナーに、思わず吹き出してしまいそうになってしまった。こらえても肩が揺れる。

< 150 / 333 >

この作品をシェア

pagetop