ガラクタ♂♀狂想曲
「津川さん?」
「——え、あ、はい」
「お知り合いの方ですか?」
私の視線の先を追い、そう言ったオーナー。
あれが瑠美ならば片方は"お知り合い"で、片方は名前と声だけ。
「ええ、まあ」
「そうですか」
そして駐車場のほうへハンドルを回したオーナーは、きゅきゅっとタイヤを鳴らせ、見事な手さばきでスッと車を停めた。
「どうなさいますか?」
「え?」
「やめておきましょうか」
「……」
思わず黙り込んでしまった。そして入り口のほうへ目を向ける。
「——はい。すみません」
「わたしは構わないですよ。それでは駅までお送りいたしましょう」
そしてふたたびハンドルを切り返すオーナー。入り口のほうへ車の頭を向け、ぐるりと戻っていく。
「ごめんなさい」
申し訳なさすぎて、頭を下げたまま顔が上げられない。私が行くと言ったのに、こんなことになってしまうだなんて。
「いえ、気になさらないでください。ですが津川さんとわたしは、なにかご縁があるようですね」
するとオーナーはそう言って、ほんの少し笑ったように思えた。
「どういうことですか?」
思わず顔を上げ、オーナーの横顔を眺める。
「わたしが津川さんの電話を受けたとき、何やらピンときたと言ったでしょう? どうやらわたしは、そういう能力に長けていたようです。今日気づきました」
ええっと、
「よく、わからないですが」
意味がわからず、首を傾げる。すると突然プッと短く、クラクションが鳴った。
思わず身体がびくっと反応してしまい、おそるおそる前方へ顔を向ければ、ふざけているのか酔っ払っているのか、数人が駐車場内で群がっているのが目に入る。