ガラクタ♂♀狂想曲

「驚かせてしまって、すみません」

「いえ大丈夫です。ほんと邪魔ですね」


ゆるゆるスピードを落として進む車。ここからでも頭を幾分動かせれば、まだ入り口付近に2人の姿があるのが見えた。こっそり息を吐き出す。

辺りが暗いせいか、それとも服装なのか、はたまた一緒にいるのが若いデンちゃんだからか。瑠美はとてもじゃないけれど、30歳に見えない。想像していたのとは、まるで違う。

だけど私がこれまでどんな人をイメージしていたのかと問われても、それはわからない。ただ漠然と、あんな感じではないと思っていた。

背はすごく小さくて、デンちゃんの半分しかないんじゃないかと思えるほど。ここから見えるかぎりでは、少女のような感じだった。


すると突然、冷たい風が車の中へ入り込んできた。


「すみません。すぐ閉めますので」


その声に目をやれば、運転席のほうのウィンドウがスーッと下がっていく。


「おーい、シューッ」


え。
いま、なんて。


さっと視線をデンちゃんのいるほうへ移す。するとこちらへ目を向けている2人が目に入る。デンちゃんはライトが眩しいのか、顔の前に片手を翳していた。

そしてその手がふわりと上がり、こちらへ向かって軽く手を振って笑顔を向けてくる。


なに。


心臓が大きく一度バクンと跳ねると同時に、短く息を吸い込んだまま固まってしまった。


「お前、こんなところで何してるんだ?」


オーナーのその声に、思わず顔を叛けてしまった。反対側の窓へ顔を向ける。

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