ガラクタ♂♀狂想曲
「えー、コーキさんこそどうしたんですか? 暇してるなら、店に来てくださいよ」
「俺はもう卒業したから」
「だけどなんか寂しいですよ俺。コーキさんがいないと」
ガラスにぼんやりと映るデンちゃん。私の知らない、愁のときのデンちゃんとオーナーが、コーキ?
「だけどお前さ? 今日休みなんだったら、こんなところで油売ってないで早く帰れよ。ショコちゃんは?」
瑠美に気を遣ったのか、少し声を落としたオーナー。
「じゃコーキさんが、俺を送ってくださいよ」
「やだね」
頭の中が整理つかず、ただ2人の会話を頭に流し込む。かなり親しい関係のようだ。
「じゃあ、またな」
「あ、お疲れさまっす」
「あはは、言ってろ」
そしてふたたび加速しはじめた車。ウィンドウが上がったのか、車内が静まり返る。
上品な静かな振動と、微かに聞こえるモーターの音に身を任せる私は、流れ去る景色を眺めながらゆっくりと頭を整理していく。
「お騒がせいたしました」
「……いえ」
「なんだか、急に静かになりましたよね」
さっきの出来事が、まるで夢だったかのように思えるほど、私から見て普通にそう言ったオーナー。だけどオーナーはデンちゃんのことを愁と呼び、そしてデンちゃんからはコーキさんと呼ばれていた。
"暇してるなら、店に来てくださいよ"
"俺はもう卒業したから"
——ということは、つまりオーナーがカフェをオープンする前、デンちゃんと一緒のお店でホストをやっていたということなのだろうか。私の見解は、間違っていないよね。