ガラクタ♂♀狂想曲
「——そういえば、津川さんも店へ電話をくださったことがありますよね」
そしてアクセルをゆっくり踏み込みながら、続けて口を開くオーナー。
「ああ、クラブのほうです。今の言い方ですと、なんだか少し紛らわしかったですね」
デンちゃんの携帯の件で、そういえば一度だけ。
まさか。
「——あのときの?」
「そうです。じつはあの電話を受けたのがわたしです。さらに言うなら、愁の代わりに、コンビニにも引き取りに行きましたよ」
「ホストは、いつからなさっていたのですか?」
「18の頃からです」
「よほどの才覚をお持ちなのですね。そのお年で、お店まで構えるほどですし」
あ。なんかいまの言い方って、ちょっと嫌味っぽかったかも。
「まあ、そうですね」
だけど受け流すように、サラリとそう言ったオーナー。
「お店を持つのが、夢だったのですか?」
「どうでしょう。いわば金持ちの道楽、趣味といったところでしょうか」
「…そうですか」
「いまのは半分本気で、あと半分は冗談です」
ひょこっと肩を上げた。
「あの土地はもともと父のものです。あんなにいい立地で、この年のわたしが店を構えるためには、やはり父の気まぐれがなければ実現しなかったでしょう。わたしだけの力では、到底無理です」
そして首元へ手をやり、ネクタイを緩める。熱い人なのか冷めた人なのか、真面目なのか不真面目なのか、ちょっとよくわからない。
「こういった話を、オーナーは誰にでもするのですか?」
「ええ。それはもちろん。聞かれれば、どなたにでもこのようにきちんとご説明させていただいておりますよ。わたしに興味を抱いてくださってのことですから、当然のことです」
なんだかすごい。気後れしてしまいそう。
確かに聞けばそれにきちんと応えてはくれるけれど、堅苦しい言葉ばかりだ。